8月1日より勤務する衛生士さんたちへの手紙です。
「衛生士としての品格」より続く
いよいよ明日から勤務ですね。
ドキドキしてますか?
私たちも同じですよ。(笑)
8月1日に勤務して一番最初に見てもらうのはEXAM2という時間です。
これはその前にレントゲン撮影などの詳しい検査をし、それをもとにお口の中全ての状態の分析と治療計画を説明するもの。
そして、「虫歯はなぜできるのか?」「歯周病とはどういうものか?」を担当衛生士がパソコンを使って説明した後、プラークコントロールの練習をし、グロススケーリング(大まかな歯石とり)までします。
これはどんな患者様でも1時間30分の予約を取っていただきます。
ここで、私たちが一番重要視するのが
「フロス」です。
ですので、ブラッシング指導とは言わず、あくまでもプラークコントロールと呼びます。
お二人が当院に勤務されたとき、多分気づいてもらえるだろうと思います。
治療が始まり、形成や充填をするとき、歯肉縁に近い部分を削ってもほとんど歯肉から出血をしないということを。
これは私のテクニックというより、その時点で、ほとんどの患者様がフロッシングの習慣を身につけているからです。
十数年前、私の師の川村泰雄先生からフロッシングの重要性を教育されました。
その東京の講習会から帰ってきた翌日の月曜日。
私はスタッフに言いました。
「今日から全ての患者さんにフロスの説明をする。」
スタッフの反応はどうだったと思います?
衛生士全員が反対したのです。
「どうせ説明しても、患者さんは絶対してくれませんよ。」
というのがその理由でした。
その前の講習で、私は川村先生からプランニンングについても教えてもらっていました。
川村先生の治療計画は常に最上のプランでした。
内容も、もちろん治療費においてもです。
そのとき川村先生はこう言われました。
「こんな大掛かりで治療費もかかる治療プランを説明しても、患者さんは絶対に『うん』とは言わないと思うでしょう。
ほとんどの歯科医がそう考えます。
でも、なぜそれをあなたが決めるのですか?
それを決めるのは患者さん自身ではないですか?」
その言葉に感動をした私はスタッフにもこう言いました。
「フロスをするかしないかは、患者さんが決めることだろ?
やりもしないで、何でしないと決めつけるの?
とにかく、今日からやる!」
スタッフは半信半疑だったと思います。
正直なところ私もそうでした。(笑)
で、結果はどうだったか?
それは8月1日が来ればよくわかっていただけます。
私はパンキー先生の書かれた本にある日出会いました。
「パンキーフィロソフィー(パンキーの診療哲学)」という本です。
大変感動をしました。
しかし、そこに書かれていたのは診療に対する哲学でしたので、実際にはそれをどう診療に生かしていけばよいのかわかりませんでした。
そして川村先生の講習会に参加したとき初めて、川村先生がそのパンキー先生に直接指導を受けられていたことを知りました。
不思議な縁でした。
その「パンキーフィロソフィー」の中にこんな言葉があります。
あなたのするべきことは、歯科医学のできうる最適の方法を患者に告げることです。
その上でどうするかは、患者が自分で決定することなのです。
患者との間に妥協を図るつもりであるなら、あなたが前もって判断するのではなく、患者の知識を基本において妥協することです。
あなたはすべての患者に最適な歯科治療がどういうものかを話すべきです。
そして、患者がどこか他へ行く決心をしたときにも、戻ってこられるようにドアをあけておきなさい。 Dr.ダニエル・ハリースミス一昔前のアメリカでは、虫歯になればお金をかけて治療をするより抜歯をすることが常識でした。
それについて疑問を感じていたパンキー先生は、母親からのこの手紙を契機に変わります。
「あなたの診療はうまくいっているようで何よりです。
でも、私がうけたようなことを、患者さんにしてはいないでしょうね。
私は歯をすべて抜かれてしまって、今では義歯をしています。これは私の人生にとって最高に不幸な経験です。」
このとき、彼女はまだ42歳で美しい女性でした。
それから、いい治療をするためにパンキー先生は奮闘していました。
しかし、なかなか理解されません。
そのため貧乏だったパンキー先生は、よき理解者のブランチャード夫人の援助でパリの国際歯科学会に行きます。
パンキー先生を援助したブランチャード夫人は富豪の未亡人でした。
パンキー先生をパリに行かせるため、夫人はこう言いました。
「あなたは前途有望な若者なのです。
この小さな治療室の外の世界で何が起こっているのかを出かけていって見るべきです。
そこで、世界的に有名な数多くの歯科医師と接触できるのではないでしょうか。
あなたはそこで何かを学ぶはずです。
私はあなたがとても大きな可能性を持っていると確信しているのです。」
そこで紹介された Dr.ダニエル・ハリースミスにこう言われたのです。
Dr.ハリースミスはパリで超一流の歯科開業医でした。
アラブの王様なども治療にきており、治療のお礼にロールスロイスをプレゼントされたこともありました。
私の診療室では一貫して流れている方針があります。
それがこれです。
私は常に患者様にこう問いかけます。
「あなたはどうしたいのですか?」
全ての決定権は患者様にあります。
私たちは、患者様がよい決定をするための援助者なのです。
援助をするためには「力」が要ります。
それは「お金」であったり、「強い意思」であったり、「体力」であったり。
その中で、大事なことは「見識」でしょうか。
ブランチャード婦人の見識は素晴らしいものでした。
なぜならパンキー先生の業績は
このように発展したのですから。
このパンキー研究所には世界中の歯科医が勉強のために訪れます。
私が行ったときも、「あなたが帰った後には、スペインからの歯科医のグループがやってくる。」と言っていました。
素晴らしいことに、この研究所は営利目的ではなく、すべて寄付でまかなわれています。
患者様の援助者となるべきあなたたちに一番必要とされるのは、「人間を理解できる広い心」です。
そのためには、衛生士の勉強だけでは足りません。
新聞を読んでください。ニュースを見てください。それで世間の動きを常に知って、それについて考えてください。
知っているだけでは足りません。
自分の心で考えることが大切です。
本を読んでください。特に古典を。
映画を観てください。ドラマを観てください。ドキュメンタリーを観てください。もちろん質のいいものを。
そして、感動を忘れないようにしてください。
美味しいものを食べましょう。料理をしましょう。
料理は総合芸術ですし、人をもてなす心が養われます。
いい人達と付き合いましょう。
良くない人と付き合っていると、全てがそんなものだと思ってしまいます。
あなたの友人は誠実ですか?そして有能ですか?
お洒落もして下さい。それは決して高価である必要はありません。
創意工夫と美的センスが養われます。
美術館にも行きましょう。
本物に触れることは大事です。
そして一番やって欲しいこと・・・
院長を大事にしてください!(爆)
【業務連絡】
Thinksellさんへ
打ち合わせの日程のご連絡が遅れてすみません。
次回は、この新人達に「衛生士として、何を学ぶべきか?」についてお話をして欲しいのです。
時間は40分ほどを予定しています。
明日その日程を決めてご連絡します。
よろしくお願いします。