
もう10年近く前の話である。
総勢20名ぐらいの歯科医の団体で、マイアミの学校に1週間ほど勉強に行った。
講義は日曜日の午前中で終わったのだが、その日に日本に帰る飛行機が取れなかったので、サンフランシスコで一泊することになっていた。
空港からホテルまでは、日本人のガイドさんがバスで送ってくれた。
ツインの部屋ばかりで、人数が奇数だったので、くじを引いて一人で部屋を独占できる人を選んだ。そのラッキーな歯科医は私だった。
他の先生たちは、団体で買い物に行くとのことだったが、私は一人で路面電車に乗って、チャイナタウンで食事をし、買い物をし、サンフランシスコの夜を楽しんだ。

11時ぐらいにホテルに帰ると、その先生たちが廊下でひそひそやっているではないか。
「なんかあったんですか?」
「あっ。先生。じつは・・・」
私たちの団体の中に、とんでもない先生(Dr.Xとする)がいて、全員から総スカンを食っていた。
Dr.Xはホテルに到着そうそう、ガイドさんにアメリカンレディーのオーダーをしたらしい。
当然、そのDr.Xは外出せず部屋に入ったきり出てこない。
「というわけで、丸岡先生。今もノックしてるんですけど返事がないんです。」
「相部屋はどなたです?」
「O先生です。」
「じゃあO先生。しばらく私の部屋でいます?後からもう一回見にこられたらどうです?なんやったら、私の部屋で寝てもいいですよ。」
「そうさせてもらえますか?」

となって、その翌朝。
迎えが来るまで私たちはロビーで、
「楽しかったですけど、明日から診療ですね。がんばりましょ。」
などと思い出話などをしていると、Dr.Xが青い顔をしてフロントの前をうろうろしている。
しかし、だれも声はかけない。
「何やってるんでしょうね。」
「さぁ。」
そうこうしているうちに昨日のガイドさん到着。
Dr.Xと何か話しをしているなと思っていたら、私たちに「しばらくお待ち下さい。」と言い残し、2人であわただしい動き。
「何かあったんでしょうか?」
「どうでしょうね。」
あとでO先生が教えてくれた。ガイドさんから聞きだしたらしい。
「丸岡先生。Dr.X、クレジットカード全部なくしたらしいですよ。」
「えー、また何でですか?」
「本人は、朝、公園を散歩していて、その時に落としたと言ってるらしいですけど・・・クスクスクス。」
「えー。そんな朝から散歩するようなタマ違うでしょ。」
もちろん真相は、昨夜のアメリカンレディーが、Dr.Xの隙を盗んでテイクアウトをなさったのだ。
昨今の日本人の外国でのあの無防備さを見ると、まさしく平和ボケとしか思えない。


