2007年10月18日

これからの歯科医療-医師不足の背景・産婦人科医の受難-

これからの歯科医療-日本型社会の崩壊-より続く

医師不足で、医療崩壊などと言われています。
確かに日本の医師数は十分ではないのですが、医学部が減ったわけでもないのに、なぜここにきて急にでしょう?
二つの原因があります。
一つは医師の業務と責任が過大となってきたこと、もう一つは研修医制度です。
このサイトの内容をベースに解説してみます。

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過疎地をはじめとした地方での医師不足は以前から深刻な問題でしたが、地方の中核地域や都市部でも医師不足が指摘されたのは数年前からです。ただし、それもすべての診療科に関してではなく、小児科と産科に限ったものでした。
しかし2006年からは、都市部の医師が全般的に不足しているという指摘がされるようになったのです。
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私の同級生のMのお父さんは産婦人科医でした。
学生時代、いつだったか「何で歯科医になろうと思ったのか?」という話になって、Mはこう言いました。

「俺は産婦人科には絶対になる気はなかった。
生まれてこのかた、オヤジと旅行に行ったことなんてない。
一回伊勢に行ったことがあるけど、オヤジは着いた途端に呼び戻された。
あんな生活できへんで。」

これが開業している産婦人科の医師の生活です。
しかし、旅行に行きにくいのは医者だけではありません。
私の患者様にお寺の方が何人かいらっしゃいます。
その方たちも旅行にはなかなかいけません。
なぜなら、檀家の方が亡くなって、いつお通夜とお葬式が入るかわからないからです。
でもお坊さんの仕事は一分一秒を争うわけではありませんし、多少お経を間違えても誰も怒りません。

また、命を預かっているのは医者だけではありません。
パイロットもそうですし、タクシーの運転手の方もそうでしょう。
でも大きな違いがあります。

歯学部の授業で、ある先生がこう言っていたのを思い出します。

「医者は人が死んでも許される唯一の職業です。
治療している患者さんが亡くなった時、それがすべて罪に問われるのなら誰も医者にはならない。」

この言葉を聞いたら、一般の人はどう感じるのでしょうか?
当たり前の話なのですが、これがもう通用しなくなっていることもあるのです。

「医療消費者」という言葉が言われるようになりました。
以前は「患者」でした。
患者と医者は何となくの信頼関係で結ばれ、「最善をつくしました。」「先生、ありがとうございました。ここまでしていただいて故人も本望でしょう。」となっていたのですが、もうそうではなくなっています。

消費者ですので、1000円を支払えばそれと同価値のものを要求します。
つまり治療費を支払ったのだから、それに見合う結果がないと許さないということになります。
金銭的なことよりももっと大きな問題は、以前にも書きましたが、日本が「子供の社会」になっていることも大きな原因です。
つまり、「依存」と「過大な要求」。
医者なんだから、今の医学なんだから、なんでもうまくいって当たり前。

しかし人の体は「製品」ではありません。

また司法の判断も変わってきています。

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2006年福島県立大野病院産科医逮捕(Wikipedia)

2004年に福島県立大野病院にて癒着胎盤を原因とした母体死亡事例において、2006年になって産婦人科医が救命できなかった結果責任を問われ、担当の産婦人科医が突然逮捕された。
この事例は産婦人科医が一生に一回遭遇するかしないかと言うほど稀な症例であり、しかも当の産婦人科医は地域に於ける産科医療をたった一人で貢献しているという状況に於かれていた。

この大野病院の一件については日本母性保護産婦人科医会が声明を発し、「この様に稀で救命する可能性の低い事例で医者を逮捕するのは産科医療・殊に地域に於ける産科医療を崩壊させかねない」と批判した。
事実、この一件が契機となって特に昼夜を問わず地域医療に貢献していた医師の意欲は著しく低下し、負担の大きい(特に地域の)医療現場から医師が去るきっかけを作った。
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つまり、日本でトップレベルの医師と最新の医療機器の整った病院でも救えるかどうかわからない患者が亡くなったということで、この産婦人科医は逮捕されました。
任意同行の場面はTVで放送されましたし、この医師の奥さんは臨月でした。

どう思われますか?
産婦人科を志望する医師が減って当たりまえでしょう。

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医療民事訴訟(Wikipedia)

従来医学的には正しい医療行為を行ったにもかかわらず、不幸な転帰をたどった症例において、遺族側が病院や担当医師に結果責任を要求する医療訴訟が多発し、医師・病院側が敗訴する事例が見られた。

その判決において「(その当時は無かった)医療知識があれば救命できた」や「(県内に数人しかいない)専門医がいれば救命できた(はずなのだから過失がある)」「過失は一切無いが、賠償しろ」「病気が治るという期待権が侵害された」等、医療の不確実性を考慮に入れず、当時・現在の医療状況・医療財政、生命の摂理を一切無視したものが多発した。

特に産科領域では、産科医の不断の努力によって達成された周産期死亡率の低下により一般的に子供は正常に生まれて当たり前との認識が生まれ、何か異常が起こると全て医療ミスと見なされてしまい医療訴訟となる可能性も高いといわれている。
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いつの時代でもどの国でも、本来は出産は危険なものです。
ですので子供は大事にされてきました。
「よく五体満足で生まれてくれた。」「よくここまで無事に育ってくれた。」
なのでお食い初め、端午の節句、ひな祭り、七五三など、節目節目で喜びをかみしめて来たのです。

人の体ですから、いつ何が起こるかわかりません。
でも一般の方はそうは思っていませんよね。

一般の方は、何か手術をする時に「全身麻酔」を希望されます。
でも医師は、できるだけそれを避けて、できるなら腰椎麻酔などで手術をしようとします。
なぜなら全身麻酔は一種の脳死状態を作り出していますから、何が起こってもおかしくないのです。
ですので、私は知り合いのどなたかが全身麻酔で手術をする時には、どんな簡単な手術でも「必ず家族の誰かがついているように」とアドバイスをします。

私の友人の歯科医が簡単な縫合をしてもらうために、ある病院で局部麻酔をしました。
ところが、注射をしたとたんに意識を失い、意識が戻った時には半身不随になっていました。
今もって、何が原因だったかはわかりません。

子供は普通に生まれて当たり前。
何かあったら医者の責任。
出産は人生の「イベント」。

それを象徴しているのがあの「夫が出産に立ち会う」というやつでしょう。
よくTVで美談として放送されますね。
私はあれはとんでもないことだと思っています。
今まで書いてきたように、何が起こるかわからないわけです。
突然の大出血があるかもしれません。
その時に分娩室で素人がウロウロしていたら、邪魔です。
男は血に弱いので、失神するかもしれません。
そんなことが原因で処置が遅れるとしたら?
それを積極的に勧めている医療機関があることも私はどうかと思います。

私たちは「医師」であり「科学者」ですので、その誇りを失ってはならないと思います。
いたずらに「消費者」に迎合してはいけないはずです。
私は眼の前にいる人を「消費者」とは見ていません。
あくまでも大切な「患者」と見ていますので、はっきりと「ノー」も言いますが、困っておられたらどんなことでもしているつもりです

ネット上では、「賢い医療消費者になるために」といった記事が結構ありますが、一般の方にもよく考えていただきたいのです。
本当にあなたは消費者として扱われていいのですか?

これからの歯科医療-番外編-@に続く

 










posted by maruoka-yoshimitsu at 10:50| Comment(1) | TrackBack(0) | 丸岡私見 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
気になったことが有ったのでコメントさせてください。

何事にもサービスを受ける側は、
支払った代価に「見合うもの」もしくは「それ以上」を求めます。

しかし、
サービスを提供する側がそのサービスに
如何なる制約が伴うものか情報を伝えていない事も多く見られませんか?

私が感心した逆のケース(制約の説明があった)では、丸岡先生ご推薦の某ホテルです。

納得のいく合理的で公正なルールにて制約を明示されております。

例としては、
クラブフロア専用ラウンジのしおりに、
同伴した子供の過ごし方次第では退席を要求すると書いております。

実際、私の近くにいた家族連れの方にも説明しておりました。

ほかのホテルやレストランでも同様でしょうが、
治療行為の結果もたらされるリスクについて説明してくれない医師や歯科医師の方は多くいました。

当然、素人の私に今からする治療の「リスク」を説明されても判断できないケースも多いでしょうし、不運であれば同意を得るより早く処置しなければいけないケースもあるはずです。

ですが予期せぬ事故の時に、
その先生の説明を信用できる信頼関係が無かった事が引き起こした問題も有るのではないでしょうか?
残念ながら医療人で無い私にとって、
ニュースからの情報だけでは、本当の事はわかりません。
わかるケースに遭遇していない幸運も有りますが…。

因みに、前述の子供は走り回ることも無く小さな淑女と小さな紳士として過ごしていました。
子供に対してもそこまで雰囲気を理解させるあのホテルには脱帽でした。
Posted by てら at 2007年10月18日 19:05
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