昨日のこのエントリーに関連したことになるのですが、まず、よい技工士になるために必要なことは何でしょうか?
私が必要だと思うことをあげてみます。
1.心
2.科学的思考
3.技術
4.コミュニケーションの能力
5.常識
今日は、「心」について。
私の師の川村泰雄先生の技工室にはこのような言葉を書いた色紙が飾ってあります。
うろ覚えでかなり不正確ですが、
「あなたがたの目の前にあるのは、ただの石膏模型ではない。
血が通った患者様そのものである。」
このような内容だったと思います。
もちろんまだ皆さんは、実地のいわゆる臨床ケースの技工はまだあまりしていないのではないかと思います。
それとももう経験されているのでしょうか?
もしそうなった場合、あなたはその模型の患者様の顔を想像できますか?
どんな思いで、自分のブリッジや義歯ができるのを待っているかわかりますか?
これは今私自身が作っている途中の仮義歯です。
それは、このケースの方の義歯です。
お盆が済んだら、抜歯とインプラントの撤去をしますので、その場でこの仮義歯が必要になります。
技工所に出そうかとも思ったのですが、咬合平面の乱れもあり「このように」といってもなかなか私の指示が理解してもらえるとは思えず、自分で作ることにしました。
この方は次回の予約時はドキドキもので来られます。
前歯が5本一気に無くなり、「入れ歯」になるわけですから当然ですね。
おまけに女性です。
そのときに入る義歯がオカシナものだったら、患者様のショックはいかほどでしょう?
ですので、この仮義歯は私自身で患者様の顔を思い浮かべながら作っています。
今、義歯の技工にライトが当たっていません。
歯科医も技工士も義歯を軽く見ています。
インプラントが一般的になる前の最先端の歯科治療は、コーヌスやテレスコープ義歯、アタッチメント義歯、リーゲルなどでした。
しかしインプラントに歯科治療がシフトしていくにしたがって、学術発表などもこのような義歯関係のものは極端に減ってきました。
しかし、歯科治療において義歯がなくなることはまだまだ考えられません。
良質な義歯を供給する必要はあるのです。
クラウンブリッジ、インプラント関係の技工に関しては、どちらかというとマニュアル的な正確さと美的センスが問われます。
しかし義歯の技工はそれだけではダメです。
あなたの設定する床縁が1mm長すぎただけで、患者様は痛みや気持ち悪さをずっとガマンしなければなりません。
あなたが「どうせ義歯だから」と適当な人工歯の配列をすれば、患者様は人に合うたびに「出っ歯になったのと違う?」と言われ、食事のたびに噛み切れず、食べ物を吐き出すことになってしまいます。
もしこれがあなただったら?
皆さんはまだ20歳ぐらいですので、まだこんな状況は理解できないかもしれません。
ではこれがあなたのお祖父さんやお祖母さんだったら?
あなたがお祖父さん、お祖母さんの義歯を作って、
「オイ○○。お前の作った入れ歯具合がわるうて咬めへんわ。」
「○○ちゃん。合う人合う人に口元おかしいって言われる。」
こう言われたら?
義歯の技工は「心」、特に「思いやり」の心が必要とされるものです。
これはまさしく、石膏模型の裏に人間の顔を見ながら行うべきものです。
この「心」を忘れず、「総義歯」の技工に精通してください。
やはりこれが技工の基本です。


