8月1日より当院に勤務する衛生士さんたちへの手紙です。
「勤勉、辛抱、分相応、もったいない」より続く
ボクシングで今活躍中の一家がいますね。
兄は確か世界チャンピョンです。
私は格闘技が好きなので、ボクシングの試合はよく見ます。
でもK家の人たちの試合は決して見ません。
なぜなら彼らには「品位」というものが全くないから。
外国出身の横綱がいます。
非常に強いですね。
でも今回「腰椎損傷のため、6週間の加療、安静を要す」という診断書を出して、巡業を休み母国に帰ってしまいました。
しかしその母国で、元気にサッカーをしている姿がビデオにとらえられました。
元サッカー選手がこう言いました。
「この診断書の内容だと、絶対にサッカーなんてできないですよ。」
「Noblesse Oblige」という言葉があります。
騎士道の精神を表したものです。
日本語に訳すと「位高ければ努め多し」となりますか。
位が高ければ偉いわけではないのです。
強ければ何をしてもいいというわけではないのです。
その地位における振る舞いかたがあるということ。
亡くなった小説家の開高健は、これを「漂えど沈まず」と訳しました。
あなた方が医療関係の仕事ではなく、もし他の仕事をしていた場合、「オイ」「ちょっと」「ねーちゃん」などと呼ばれることがあります。
しかし、私の病院で働いている限り、まずそういうことはないでしょう。
ほとんどの患者様は、敬意を持ってあなた方に対応してくださるはずです。
なぜでしょうか?
お二人は衛生士学校を卒業するとき、戴帽式を経験しましたよね。
頭を下げ、ナースキャップを頭に載せてもらい、衛生士となるための誓いをたてたはずです。
一時期、このナースキャップを廃止しようとする動きがありました。
清潔には関係ないし、反対に業務の邪魔になるというのがその理由です。
もちろんそれにも一理はあります。
でもここで忘れられていることがあります。
それが「Noblesse Oblige」です。
このナースキャップは清潔には直接関係しませんが、「清潔感」を表しています。
そして、私たち医療人の誇りの象徴なのです。
単に役に立たないから必要ないというようなものではありません。
反対にいうと、これがあるからあなた達の身分が保障されます。
もうよく知っているように、私の病院では全員がこのナースキャップを被っています。
それなくして診療室に入ることは許されません。
全ての権利には義務が伴います。
あなた方が患者様に敬意を持っていただくということは、あなた方も患者様に対し大きな義務を負っているのです。
その義務とはなんでしょう?
奉仕の心?治療技術?医学的な知識?
私が、衛生士として一番大事なことと考えるのは「衛生士としての品格」です。
では「品格」とはなんでしょうか?
「オホホホホ」と上品に笑うことでしょうか?
一見優雅な振る舞いでしょうか?
それはただうわべのことにしか過ぎませんよね。
小山衛生士のことがよく出てきます。
もちろんあなた方の直接の指導教官ですし、上司になりますから当たり前のことですが。
しかし、その他の理由があるのです。
小山衛生士は結婚しても働いてくれていました。
そして妊娠し、出産のため退職することになりました。
その当時はなかなか後任の衛生士が決まらず、正社員での勤務が終っても、結局は臨月まで受付を手伝ってくれました。
もう限界となり退職しましたが、その一週間後に出産しました。
もしかしたら受付で産気づいていたかも知れません。
1年ほどは完全に子育てに専念していましたが、その後不定期に教育のためなどに来てもらっており、この5月より正式に復帰したところです。
あなた方の指導教官を選ぶときに多少は考えました。
この「メインテナンス」のカテゴリーの2004年12月28日以前の記事をみていただくとよくわかります。
小山衛生士が退職した月の担当患者様たちの様子です。
これを見ていただければあまり説明は必要ないかもしれません。
退職する前でも、担当するメインテナンスの患者様が多く、インプラントや補綴の複雑な治療の介助につくことがあまりできませんでした。
もちろんブランクもあります。
なので、もしかしたら、病院の細かいことや、複雑な治療内容のことを一から十まで知っている大谷衛生士を指導教官にすることが良かったかもしれません。
今の私の病院に一番ふさわしい雰囲気と能力を持った服部衛生士を、指導教官にすることもいい選択でしょう。
もちろん私はスタッフ全員を信頼しています。
その中でも私は小山衛生士を選びました。
時間は誰にでも平等です。
私と彼女との間には15年ほどの時間を共有した歴史があります。
松下幸之助が言いました。
「人は10年付き合ってみないとわからない。」
もう15年ですので、お互いによくわかっていると言ってもいいでしょう。
彼女の患者様はなぜメインテナンスに必ず来られていたと思いますか?
話術が巧みだからでしょうか?
スケーリングが上手だからでしょうか?
残念ながら、小山衛生士が退職してからメインテナンスに来られなくなった患者様が何人かいらっしゃいます。
ショックなことに、私が大掛かりな治療をしたにもかかわらず、病院を変わられた方が1名いることも知っています。
それも、彼女から聞きました。
つまり、彼女はそうなってもその患者様とコンタクトがあるということです。
なぜでしょうか?
患者様は、歯といえども自分の体を任せる立場です。
自分の体を任せるのには勇気がいります。
そのためには信頼できる人かどうかが基準になるのだと思います。
信頼できない人に自分を任せようとは思わないでしょう?
患者様はそれを敏感に感じるのだと思います。
これが小山をあなた方の指導教官に選んだ最大の理由ですし、そして「何をもって『衛生士としての品格』とするか?」の答えです。
だれでも、あなたのところに来た人が
前よりもっと気分よく もっと幸せな気持ちで帰ることができるように。
マザー・テレサ
そしてもちろん、これがあなた方になって欲しい衛生士像です。
信頼関係を築くには時間も必要です。
私はTさん、Fさんとは長いお付き合いができそうだと感じています。
開業してもう19年ですからそれはわかるのですよ。
二人は間違いなく神様からのプレゼントです。
【 業務連絡 】
8月2日は、診療終了後、四条烏丸の近くで少し飲みながらお話をしたいと思ってます。
説教じゃありませんよ。(笑)
緊張しているでしょうから、少し気分をほぐして欲しいと思ってのことです。
できたら時間を空けておいて下さい。
もちろん都合が悪ければ結構です。
「援助者」へ続く
2007年07月30日
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