2007年06月22日

抜きたくない感情#4

抜きたくない感情#3より続く

昨日の最後に、アメリカ人は一つ一つの技術は多少雑であっても、トータルでの成功を達成できる能力があることをお話しました。
学会発表を見ていてもそうです。

1本1本のセラミッククラウンの美しさや、部分的な歯ぐきの手術などは日本人の歯科医の腕がずっと上だと思います。
しかし日本人の歯科医は、その歯を残すことで後々どうなるかをあまり考えずに治療を行っているように感じます。

「戦略」「戦域」「戦術」という言葉があります。
似ていますが、それぞれちょっと違います。

「戦略核」というと、これは大陸間弾道ミサイル(ICBM)を意味します。
つまり「戦略」とは国家間や世界大戦レベルの戦い方です。

「戦域」とはその中間、都市や日本でいうと県レベルの広さでの戦い方。
なので、ICBMに比べて短射程で低威力の弾頭しか積めないこととなる潜水艦発射弾道ミサイル (SLBM)などは「戦域核」といえるかもしれません。

「戦術」は戦闘の起こっている局地での戦い方です。
例えば「あの陣地をどう落とすか?」など。

私が治療計画を立てる場合には、常にこの3項目を分析しながら考えます。
どれが欠けても、うまくいきません。
治療がうまくいかないというより、患者様が納得をされないのです。

では治療における「戦略」とは?
それを考えるときには3つの要素に分けます。
1.顎関節までを含めたお口全体の調和をどうとるか?
2.生涯にわたってどういい状態を保っていくか?
3.その方の価値観と感情はどうなのか?

「戦域」的な考え方とは、その方の現在の年代や性別、生活状況だとととらえています。
つまり、子供なのか?青年なのか?老年なのか?
女性なのか?男性なのか?
現在の職業や経済状態、先々の見通しなど。

「戦術」とはもちろん1本1本の歯をどう治療していくのか?ということです。

こう考えていただくとわかりやすいかと思います。

アメリカ人の歯科医は「戦略」から考えます。

日本人の歯科医は「戦術」から考えます。

もうわかっていただけたでしょう。
是非この記事を読んでいただきたいと思います。

世界のトップの歯周病専門医の抜歯の判定は、通常の日本の歯科医よりも厳しいということです。
言い換えると、それは現在の治療技術と自分の治療技術の限界を熟知しているということでしょう。

ということは、そのような明確な判断基準を持たない歯科医が「まあ、やってみましょうか?」ということは・・・・・?

でも日本においては、この「まあ、やってみましょうか?」的な歯科医が名医とされます。
「あの先生は抜かないいい先生だ。」と。

このあたりに関しては、医療保険、医療訴訟、宗教観も関係するのですが、そこまで書き始めると終わりませんので、そのあたりはまたいつか。

つまり、全体の構想と言える「戦略」を抜きにして「戦術」のみに目が行くから勝てないのです。
そして、このように手術の方法や治療技術について大部の著書をお書きになっている歯科医の診療室で、顎関節症が治らないということが起こります。

また、いくら局地戦で勝利を収めても、首都を押さえられたら負けです。
後述しますが、「戦域」的な考えも必要になります。

太平洋戦争の開戦当初、日本軍は連戦連勝でした。
しかしその間、アメリカは国民から強制的ではなく軍費を募り、日本軍の補給路を断ち、着々と戦闘機と空母を建造していました。
結果はどうなったか?

「敵を知り、己を知れば百戦危うからず。」の孫子の兵法においてもその根底にあるのは、「勝つことより、負けないことを考える。」であり、最終的には「負けるとわかっている戦いはしない。」ということ。
それが自軍の消耗を最小限にする最上の方法ですから。

そろそろ本題に戻りますね。
では私の「戦略」を決定する「治療哲学」とは何か?
私は何のために治療をするのか?ということ。

それはその人の人生を豊かにするため。
その人が日々を幸せに生きられるようにするため。

言い換えると、「歯科の治療によってその方を決して不幸にしてはいけない」ということです。


抜きたくない感情#5に続く

 
posted by maruoka-yoshimitsu at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 診療ポリシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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