2005年05月13日

中腰で耐える#2

昨日の「中腰で耐える」の続き。

内田樹の研究室にのっていたこのお二人の対談集である。

内田樹氏(うちだ・たつる) 神戸女学院大学文学部教授
春日武彦氏(かすが・たけひこ) 都立墨東病院精神科部長

医療従事者が考えておかなければいけない大切な事についての大きな示唆があります。



内田 時間が経過することによって,取りうるオプション自体が激減するってことですよね。

 逆に,結果が出ない段階で変に相手を論破しても,負けたほうはずっとウジウジ根にもって,こっちの仕事を妨害してきたりする(笑)。そんなことになるくらいだったら放っておいたほうがいいんですよ。

 僕たちは,無意識のうちに「無時間モデル」でいろんなことを考えてしまいがちです。けれど,時間のファクターを入れるだけで解決しちゃう問題って多いと思うんですよね。先生の本も,時間というファクターを医療の中に取り入れたいうことが,大きな特徴になっているように思います。

春日 それがしばしば,「いい加減だ」とか「無責任だ」というふうにとられちゃうんですが,そうじゃないんですよ。実際,待つことで解決する問題って多いんです。

 僕は,そういう「中途半端なところで時間が経過するのを我慢できるかどうか」っていうのが,援助者の実力の1つだと思っています。それは言い換えれば,精神の健全さの指標です。我慢できない人は,お手軽なストーリーを借りて妄想に走ることになる。そういう意味では,内田先生が今回の『死と身体』で書かれていた「中腰で我慢する力」というのはまさに,そういう力のことを言ってるのだと思いました。



歯科医は「もう少し様子を見ましょう。」「そのうち慣れますよ。」というように時間のファクターを使いがちです。
これは、自分の都合のために「保留」をしている感が強いと思います。
どちらかというと「いい加減だ」とか「無責任だ」といわれる部分です。 
もちろん特に義歯などがからむ治療の場合、「慣れ」というのも大きな要素ですし、この慣れには時間も必要なのですが、患者様の精神的なケアーや納得と言う観点で、この充分に時間の要素を考えているかということに関しては疑問です。

特に抜歯に関しては、患者様はあまり理論的に考えることはできません。
最初に「この歯は抜歯が必要です。」とお話した場合、ほとんどの方は感情的に反応します。
そこで、突き詰めて「抜かないといけない。ダメだ。」を押し付けていくと、話はこじれていく一方です。

ここで大事なのが、この時間の要素です。
「こういう理由で抜歯が必要です。でもあなたに納得いただけない以上それはできません。
 ゆっくり考えていただけませんか?」
このようにご説明をした上で、しばらく私からはこの件には触れないようにします。

そうすると、何回かの治療のあと、
「先生。この歯ですが、やっぱり抜かないといけませんか?」
とお聞きになってきます。
「そうですね。もう一度ご説明しますが、これこれこういう理由で抜歯が必要なのです。
もしこのまま放置しておくと、横の歯に悪い影響がでて、今なら1本の抜歯ですむのに、先々では3本の歯を抜かないといけなくなります。
また、今抜いておけば、インプラントなどの治療の色々なオプションが考えられますが、時間が経てば経つほど周囲の状態が悪くなり、義歯しかできなくなるかもわかりません。
どうされますか?」
「そうですね。では、やはり抜こうと思います。」
このように、そうですね、90%の方はおっしゃいます。

もちろん、その間は治療計画が最終的に決定できませんので、私も治療が進め辛いのですが、これが「中腰で耐える」ということだと思っています。

posted by maruoka-yoshimitsu at 09:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 診療ポリシー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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