「私のパートナーのアメリカ人ですが、歯が痛くて困っています。」
いつものホテルからの電話ではないようだ。
すぐに来ていただいたところ、
「私の夫で、アメリカに住んでいます。
私の実家が京都なので、2週間ほど帰っています。
『健康保険はありません。
アメリカの歯医者は高いのですが、10万円ぐらいでしょうか?
VISAがありますので。』
と彼は言っています。」
「ウーン。アメリカでは1回診察したら10万円いただけるのか。
それはうらやましいなあ。」
と思って聞いていたら、スタッフが「いえいえ。そんなにはかかりません。」と言っていた。
診察してみると、4週間前にアメリカで、右下の奥歯をセラミッククラウンで被せたとのこと。
それからだんだん痛くなってきて、昨夜は眠ることができなかった。
レントゲンを取ってみると、虫歯ではない。
多分削った刺激などで、神経がダメージを受けている様子。
「神経を取りますか?」
「そうしてください。」
となった。
治療が終了して、
「神経を取りましたので、痛みは止まります。
アメリカに帰ったら、最終の処置を受けてください。」
とお話したところ、
「アメリカで何度か神経を取る処置を受けたが、
こんなにスムーズだったのは初めてです。
21日まで京都にいるので、最終の処置までして欲しい。」
となった。
その横で奥さんも、
「そうそう。私の日本で治療した歯も、アメリカではドクターが『見せてくれ。』って寄ってくるんですよ。
やはり日本人てすごいんですね。
彼は空手の道場を開いています。それで日本の伝統にも興味があるんですが、
今、彼は『やはり日本人はすごいんだ』と感動しています。」
と頷いていたが、まあ手先は器用なんでしょうが、そんな大げさなことではなく・・・
歯とか歯ぐきの形、大きさ、表面の感じなどはそんなに変わらないと思っていませんか?
いつも学会などに行ったり、外国人の方の治療をして思うのですが、これほど民族によって差があるのかと思うほど違います。
特に欧米人の治療はやりやすい。
神経を取るときに根の形を見なければなりませんが、日本人の歯の根の構造は複雑、欧米人はシンプルで、足と同じように根も長い。
根が長いと言うことは、支える骨の量も大きいということになり、インプラントの手術もやりやすい。
日本人の歯ぐきは軟らかく、感染や外傷に対する抵抗性に劣るが、欧米人の歯ぐきは固くしっかりしていることが多い。
今日の処置もやりやすかった。
つまり難しい現場で日々を過ごしているので、簡単な現場に行くと「上手」と言われるようなもの。
私もニューヨークあたりで開業したらよかった。(ウソです。それはムリです。)



カナダにいる友人の1人は「『DENTIST』ではなく、『SPECIALIST』に行っている」と言っていました。この違いが良く分かりませんが、高度な治療は『DENTIST』ではやらないということかな、と思ったことをふと思い出しました。
まず、欧米人のお口は縦方向(当たり前ですが)に大きく開きます。だから見やすいし、器具の操作もしやすいのですが、日本人はそうではありません。
SPECIALISTは専門医。
歯科では歯内療法(歯の根の中の治療やそれに関連する手術もします)、口腔外科(抜歯や手術)、歯周病(歯ぐきの手術やインプラントの手術もします)、補綴(被せたり、義歯を作ったり)、矯正などがあります。
基本的に、SPECIALISTは自分の専門分野以外の治療はしません。
DENTISTは日本の一般歯科にイメージでしょうか。
DENTISTで手に負えないような場合に、DENTISTがSPECIALISTに治療を依頼することが多いようです。
ただこれが行き過ぎて、患者には非常に不便になりました。
1つのSPECIALISTで治療が終わることはほぼありませんから、「あっちへ行け」「こっちへ行け」ということになります。
もちろん治療費はDENTISTより高額ですので、経済的に余裕の有る方が対象になるのだと思います。
経済的に許されるなら、高度な治療はSPECIALISTにということがまだ一般的ですが、最近はスーパーGPという言葉が注目されています。
GPは開業医という意味ですので、一軒の歯科医院で、インプラント、歯周病の治療などの高度な歯科治療ができる歯科医のことを意味します。
こういう歯科医も増えているようです。
私は近くにスーパーGPの先生がいてよかったです。
以前は会社(カナダの)が歯科用の保険に加入していたので社員は非常に助かりましたが、
9/11以降不景気になったときに加入をやめてしまいました。
健康保険では歯の治療はカバーされませんので、DENTISTに通うだけでも高額の出費です。
きっと彼女にも大変な出費のはず。
経済的なこともありますが、技術的にも日本の先生の方がより信頼できるということですので、
歯の治療は帰国したときに日本で受けることをカナダのスタッフにも勧めてみます。
日本人の治療は難しいなんて、絶対皆知りませんから驚くと思います。
そう言っていただけるのはうれしいのですが、まだ私はアメリカでいうスーパーGPのレベルには達していません。
私が知っているのはアメリカでの話ですので、カナダがどういう状況かはわかりませんが、ただ平均的な治療技術ということで判断しますと、やはり日本の一般的な歯科医のレベルは欧米よりは下ではないかな?とは思います。
この機会に保険に関して少しふれておきます。(これもアメリカの話です)
日本の老人保健、生活保護にあたるメディケイト、メディエイドという公的な保険はありますが、一般的には、私的な健康保険に各個人が加入するようです。
これはピンからキリで、年間に数千円しか支払われないものや、企業で加入するものなどいろいろあります。
私がアメリカの学校に行ったときの通訳の方は、旦那さんが大きな企業に勤めておられ、そこで加入している保険では、矯正治療までカバーされるとおっしゃってました。
たまに、私が治療する欧米人の方は、そのような保険の支払いを受けるために、提出しなければならないいろいろな書類を持ってこられます。(海外での治療もカバーされるようです)
この書類の作成というヤツが大変で、どういう状態で、どのような治療をして、どれだけの治療費がかかったかがメインなのですが、必ず「その治療はやり直しの治療なのか?」「そうであればそれはなぜなのか?」の記入欄があります。
このあたりも支払い金額に何か関係するのかもわかりません。