2006年11月13日

顎関節症(がく関節症)治療の経過#2(ナソロジー学派について)

顎関節症(がく関節症)治療の経過#1より続く


20年ほど前までは、咬み合わせの治療に関し「ナソロジー学派」の考え方が世界中を席巻していた。
簡単に言うと、いろいろな精密な機器を使用し、顎関節の動きや咬み合わせの関係を人工的に機械上(咬合器という)に再現しようとする考え方であり、またその基礎となる理論には大きな無理があった。



そのなかでも、特に顎関節における下顎の骨の先端(顆頭と言う)の動きを再現することと、その動き方(顆路という)を重要視した。



しかし、生体の複雑な動きを正確に機械上で再現できるはずもなく、その咬合器上で作ったクラウン(被せるもの)は生体に調和するものではなかった。


咬み合わせの治療と称して、そのような作り方をしたクラウンを全ての歯にセットされた患者様は大変不幸な目にあってしまったのだ。
とくにアメリカの上流階級に多かった。(高額な治療費の支払いが必要となるため)

しかし、ナソロジーが正しいと信じられていた時代であったため、数々の複雑で高額な機器が開発され、販売された。
まだ景気のよかった時代の歯科医は争ってそれを購入し、結局は使いこなされないままそれらの90%はお蔵入りになっている。
現在それらの機材がYahooのオークションに時々出品されているのを見ることがある。

現在はナソロジー学派も大きく方向転換をしており(まだそうでない方もいらっしゃるようだが)、日本におけるナソロジー学派の第一人者であり、また象徴的な存在でもある保母須弥也先生もその近年の著書の中で、
「ナソロジーは顆路の呪縛から解き放たれた。」
と述べられている。

大学卒業と同時に私はこの保母須弥也先生にご指導を受ける機会が何度かあった。
しかし、当時のナソロジーの理論に疑問を感じていた私は、そのままのテクニックを臨床で使うことは無かった。
しかし、20歳台の若い時期に、UCLAの客員教授でもある保母先生の近代歯科医学の考え方に触れられたことは幸運だった。
そうでなければ歯科医師ではなく「はいしゃ」になっていたかも知れない。


ではどのような理論で私は顎関節症の治療(咬み合わせの治療)を行っているのか?それはまた明日。

顎関節症(がく関節症)治療の経過#3に続く

  
posted by maruoka-yoshimitsu at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 顎関節症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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