2005年03月26日

危機 アネさん

[危機 梅宮さん]の続き

そんなこんなで、ナオミさんの治療をしていたある日。
スタッフが、
「先生。梅宮さんの奥さんという方からお電話です。」
と言ってきた。
何だろうと思って電話にでると、
「梅宮の家内です。
主人から、先生のところへ電話をするように言われました。
実は、主人の母親が1週間前から歯が痛いと言って困っています。
診ていただくわけにはいきませんでしょうか?」
もちろん断る理由はない。
非常に上品な言葉使いをされる方だった。

お母さんを連れていらっしゃった。
奥さんは岩下志麻風で、芦屋の奥さんといっても充分通用する。
お母さんはかなり高齢で、今で言う「認知症」。
かなり痴呆が進行しており、通常のコミュニケーションはほぼ取れない状態だった。
どこが痛いのか?どのように痛いのか?わからない。
「痛い。痛い。痛い。」と大きな声で叫ぶだけだった。

奥さんはもう疲れきっていた。
私がお母さんをなだめながら診療室に連れて行くときは、心底ほっとした様子だった。
何とかお母さんの口の中を見ると、かなり汚れている。
時々手を咬まれそうになるので、もちろん充分には見られない。
ひどい痛みがあるような状態ではなかったので、ブラシできる限りきれいにした。
そうしたら、
「大丈夫?」
「ウン。大丈夫や。」
とまた大きな声で叫ばれたので、これで終わりとした。

奥さんに、
「大きな虫歯があるわけではないと思います。
きれいにしたら、大丈夫とおっしゃっていましたので、そう心配されることはないと思いますよ。」
「ありがとうございました。」
深々とお辞儀をされた。

私も職業柄、精神障害の方と接することが多い。
この場合、このような方に共通するのは独特な目の光である。
「目は口ほどにものを言い。」である。
言葉で表現するのは難しいのだが、『澄んだ瞳でキラキラ光る』といったところだろうか。キラキラといってもその中には少し不気味さが混じる。
このときの奥さんの目がまさしくこれだと感じた。
もちろん「頭がおかしい」という意味ではなく、このお母さんの介護をはじめ、いろいろな精神的重圧に押しつぶされる寸前だと思った。
まさしく崖っぷち。早く精神科に行かないと壊れてしまうのは間違いがなかった。
このお二人にももうお会いすることはなかったが、どうされたのだろうか?

そして、この奥さんのもう一つの大きなストレスの原因を目の当たりにすることになる。

  ___続く___
posted by maruoka-yoshimitsu at 13:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 出来事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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