私の病院では、あなたの「価値観」を最大限に重要視します。
では価値観とは何か?
これほど多様なものはありません。
その例として、ハイラム・W・スミスの「心の安らぎを発見する時間管理の探求」から、セミナーでの著者の経験を短くしてご紹介します。
私はセミナーで価値観を明確に認識させるためにこんなシナリオを話す。
私はあなたの友達だ。ある日、私はあなたの家の前の道路に、35メートルほどの鉄骨を運び、あなたを呼び出す。そしてあなたを鉄骨の端に立たせ、私はもう一方の端に立つ。
そして、財布の中から100ドル札を取り出してヒラヒラさせながら、あなたに、
『2分以内にその鉄骨の上を落ちないで、こちらに渡ってこられたら100ドルあげますよ。』
あなたは渡るだろうか?
これまでやってきたセミナーで、渡らないと言った人は1人だけだった。
ここでシナリオを少し変えてみよう。
私はこの鉄骨を世界貿易センタービルに運ぶ。
この地上415メートルのツインタワーの間にこの鉄骨をボルトで固定する。鉄骨は長いので、少したわんでいる。天気は雨。風速20メートル。でも、眺めは素晴らしい。
『聞こえますか?2分以内にこちらに渡ってこられたら100ドルあげます。』
1万ドル、10万ドル、100万ドルと言っても『渡る』といった人は一人もいない。
今度は打って変わって、私は悪役になる。
あなたの2歳の子供を誘拐し、一方のタワーの屋上で、娘さんの髪をつかんで立っている。
『聞こえるか?こっちに渡って来い。来なかったら娘は下に落とすぞ。』
あなたはどう答えるだろうか?
あるとき、この演習に参加してもらう人選に失敗した。10代の子供を持つ母親を選んでしまったのだ。私が『来なかったら娘は下に落とすぞ。』と言うと彼女はこう言った。
『突き落として。』
おかげでセミナーはめちゃめちゃになってしまった。
この苦い経験から、私は、2歳の幼児を持つ人を選ぶようにした。
あるとき、このような女性(テレサ)にこの一連の質問を始めた。
『100ドルで渡りますか?』から始まり、
『来なかったら娘は下に落とすぞ。』の質問をした。
普通は100回のうち99回は同じ答えが帰ってくる。『もちろん渡ります。』
その答えを受けて、私はその意味を説明する。つまりその人の価値観を特定するのだ。
しかし、テレサはその場に座ったまま、ただ黙っている。
しばらくして、悲しげに、
『いいえ。渡らないと思います。』
会場にいた人は言葉を失った。
この思いもよらない返事には説明が必要だと彼女は思ったようで、こう付け加えた。
『お分かりいただきたいのですが、私にはほかに11人の子供がいます。この2歳の子のために命をささげたら、ほかの11人の子供の面倒は誰が見てくれるのでしょうか?』
私はその日、何とか価値観について説明し、セミナーを最後まで進めることができた。しかしテレサは、鉄骨の一件がよほどこたえたらしく、セミナーの残りの時間ずっと涙を流しながら、私の話は全く耳に入らない様子だった。それは私にとっても彼女にとっても心の痛むことだった。
そして、セミナーが終わると、私のところにやって来て、こう言ったのである。
『私がここで初めて体験したことをお話ししなければいけないと思います。あなたが屋上から落とすと言った2歳の子はダウン症の子なんです。あなたに言われて、私は自分があの子のことをほかの子と同じようには愛していないということに気づいたんです。それが、シヨックでした。ほかの子だったらすぐに「渡ります」って言えたはずです。でもあの子はいくつもの精神障害を抱えていて、心からあの子を愛することが難しいんです。』
あの経験からすぐあとのことになるが、香港でのダウケミカル社主催の公開セミナーで、85名ほどの参加者を前にして話をすることがあった。この原則を外国で教えると、おもしろいことが起こる。 文化が違うし、道徳というものに対するものの見方が違うからだ。
2歳の子供を持つ人を募るところにきて、インドの二ユーデリーから釆た男性が手を挙げた。私は鉄骨を床に置いて財布から20ドル札を取り出し、尋ねた。
『あなたは20ドルで鉄骨を渡りますか』
彼はしばらく考えていたが、こう答えた。
『いいえ、渡りません。』
意外だった。それで100ドルに値上げした。彼は渡らない。千ドル、一万ドルと上げたが駄目である。いくら値を吊り上げても渡らないのだ。
『間違った人を選んでしまったようですね。なぜ渡らないか教えていただけますか?』
『私はお金のために自分の行動を左右されたくありません。』
私は別の人を選んだ。中国から来た男性である。初めからシナリオを紹介して、世界貿易センタービルに案内した。そして彼の2歳の子供を屋上の端のところに連れて行くシーンになった。やがてクライマックスが訪れて、その中国人の男性に、『2歳の子供を救うために鉄骨を渡りますか?』と尋ねると、中国人の男性は即座に「もちろん渡ります」と答えた。
それから私は、あのインド人の男性のほうを向いて、『あなたは渡りますか?』と訊いた。はっきりした答えがすぐに返ってきた。
『渡ります。』
私はしばらく彼の顔を見つめたあとでこう言った。
『おもしろいですね。あなたは床の上に鉄骨があったときは、いくらお金を出しても渡らなかった。でも、お子さんのためなら地上400メートル以上の高さを渡るとおっしゃる。私が何を言いたいかお分かりですね。』
最後はコカ・コーラ社の副社長との間でおこったことである。
セミナー初日も終わり近くになり、鉄骨の話が終わった。全員が心を動かされた様子だったが、ほとんどの人が退室したあとで、この副社長がやって来た。怒りで顔が青ざめている。
『私は時間管理のセミナーにきたんです。宗教の話を聞きにきたつもりはない。』
彼にとって何が不満だったのかはよく分かった。しかし、私はそのときの自分の答に我ながら驚いた。実際のところ、私は自分の言葉が信じられなかった。私は彼の目を見てこう言ったのである。
『待ってください。取り返しのつかないことをおっしゃる前に、家に帰って今晩、鉄骨を渡る理由になるものが何かないか考えてみてください。なければ明日はおいでにならなくても結構です。受講料はお返しいたします。』
彼は、『分かったよ。八イラム』と言って、荒々しい勢いで部屋を飛び出して行った。
とてもいやな経験だった。その晩私はなかなか眠れなかった。
翌朝、私は7時30分に会場に着いた。スタート時刻の一時間前である。オーバーヘッド用のスライドをそろえていると、その副社長がやって来た。開始45分前だ。彼は何も言わず中央の列を進んで来て、一番前の席に座り込んだ。振り返って彼を見ると、私をにらみつけている。私は身体が硬直するのを覚えた。
彼は言った。
『ちくしよう!』
『どうしたんですか?』
私は尋ねた。
『あのくだらない鉄骨を渡る理由になるものがあったんだよ。』
私は言った。
『あなたがどんなパックグラウンドをお持ちなのかは知りませんが、誰にでも基本的な価値観があるのです。』
すると彼は肩の力が抜けた素振りで、私が忘れることのできない言葉を口に出した。
『なあ、ハイラム。私は自分の価値観に対して何ひとつ行動していないんだ。』
彼は自分の人生の中で大切なものを見つけたのだが、それに注意を向けていなかったことも同時に分かったのである。
私たちはセミナー前の30分、そして終わってからの1時間、−緒に座って話し合った。その話し合いの中で分かったことは、彼がやっかいな離婚話の中にあるということだった。互いに弁護士が介入して話が進められていた。
これはあとで分かったことだが、彼は自分の価値観を書き留めて、仲たがいをしている奥さんと直接会う約束を取った。そして、自分が書き留めた価値感を奥さんに見せたのである。奥さんは腰を抜かさんばかりに驚いた。そしてその話合いのあとで、今度は奥さんが自分の価値観をまとめた。再度会って二人の価値観を比較してみると、ほとんど同じだった(ここで強調しておくが、異なった2人の価値観が全く同じであることは決してない)。二人がよりを戻したことは驚くには及ばない。
私の言いたいのはこのことなのだ。
『誰にでも価値観がある』
しかし、価値観というものは人によって違う。子供の頃の生活やこれまでの経験、持っている才能や興味、性格によって異なってくる。だからこそ、「こういう価値観を持ちなさい」とは言えないのだ。
私の望みは、自分の価値観を見つけ、それを日々の行動と計画に活かせるように助けることにある。
なぜならば、あなたにも『心の安らぎ』を味わってもらいたいからである。
事例のみを抜粋してありますので、個々の事例に関する考察は省いてあります。
これを紹介した意味は、とにかく価値観というものがどれだけ多様であるかということ、また、どの価値観も間違いとは言えないということです。
そして、一番におわかりいただきたいのは、私がこのことを深く理解しているということです。
私のホームページ、ブログに載っている症例は特別なもののように見えるかもわかりませんが、決して私が『こうしなさい。』と押し付けたわけではありません。
もしあなたが治療に来られたら、
「どうしますか?この痛みのある歯だけ治療しますか?
それとも、全体の検査をしてからご説明をしましょうか?」
の質問から始まります。
「この歯だけでいいです。」とあなたが答えた場合は、その歯の治療だけで終わります。
もちろん、私の価値観から言うと、やはり全体の歯をきちんと検査し、治療プランを立て、効率的に治療を進め、そして定期的なメインテナンスを続けていくことが最もよいことだと思います。
しかし、そうしたくても、「仕事が忙しい。」「体調が悪い。」「小さい子供がいる。」「親の介護をしなければいけない。」いろいろなご事情があります。
それはそれで遠慮せず言っていただければ、その事情にあったアドバイスが出来るのです。
では、全体の検査をしたとしましょう。
そこで私が質問することは、
「あなたの治療のゴールのイメージはどのようなものですか?」
「例えば、右下の歯の無い部分には、入れ歯を入れたいですか?インプラントをしたいですか?」
「前歯の色が変わっていますがそれは治療したいと思っていますか?その歯はさわらないほうがいいですか?」
「全て健康保険の範囲で治療をしたいですか?それとも保険外の治療を希望されますか?その場合どれくらいの予算を考えておられますか?」
といったようなことです。それをお聞きしてからプランニングに入ります。
しかしここで困るのは、自分自身の歯に対する価値観を持っておられないか、明確に説明していただけない場合です。
先月、ある社長さんが治療にお見えになりました。ある歯科業界のメーカーの社長さんからのご紹介でした。
検査が終わり、当然、上記のような質問をしました。
どのような質問をしても、
「費用もふくめて、先生が一番いいと思う治療法を私に提案してください。」
とお答えになります。経験から言うと、こういう場合は、反対に注意が必要なのです。
価値観がはっきりしていない場合が多いのです。
「治療プラン」のカテゴリーにあるように、プランニングをしました。延べにして10時間ほどかけて模型をつくり、費用の明細書も用意しました。
セラミッククラウン、インプラントを含む治療になるケースでしたので、治療費は高額になります。
ご説明の当日、書類と模型をその方の横において、私はこの言葉から始めました。
「最上のプランを作りました。しかし、これはあくまで私のプランです。治療を受けられるのはあなたですから、このプランをベースにして、ここはどうしよう、ああしようと一緒に考えていきましょう。」
そのとき、このかたはちらりと治療費の明細を見られたのでしょう。かなり狼狽された様子で、
「先生。すべて健康保険で治療をしてください。」
「それは全く問題ありませんが、その場合ほとんど選択肢はなくなります。ぐらぐらの歯は抜いて、あとは入れ歯になります。それでよろしいか?」
「はい。」
そこで、衛生士にタッチして、プラークコントロールの説明と練習に入りました。
それが終わって私を衛生士が呼びにきました。
「先生。〜さんがお話があるそうです。」
「先生。さっきは健康保険でとお願いしましたが、分割でもかまいませんか?月に×万円ぐらいならお支払いできます。」
「結構ですよ。では総額のご予算はどれぐらいをお考えですか?」
「○万円ぐらいでしょうか。○万円でしたら分割でなくてもお支払いが出来ます。」
「わかりました。それでは、ここをこうして、こうしたらそのご予算になります。」
「それでお願いします。」
その次のご予約の日の朝。この方からの電話を衛生士が取りました。
「先生。〜さんからお電話があって、『家族とも相談しましたが、治療はお断りしたいのです。ここまでしていただいた先生に大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。』とのことでした。」
もちろんインプラント1本の治療費がこの方の予想以上だったのかもわかりませんし、他の経済的な理由があったのかもしれません。
こういう事例はお互いにとって大変不幸なことです。
私は先月は1日も休みが取れませんでしたので、その中であの1日が休めていたら・・・とも思いますが、この方もかなり傷つかれたと思います。
もちろん、どちらが良い悪いといった議論をすべきことでもありません。
ただ、この方は価値観の大事さに気づく前のコカ・コーラの副社長だったわけです。
安心して治療を受ける、治療をするためには、やはり歯にどのような価値観を持っているのかを、お互いにはっきりと理解しておくことが重要だと思っています。
その価値観はその方独自のものですし、ここまで述べてきたように善悪を区別するものではありません。
私は、価値観をはっきりさせていただいた上で、あなたにも『心の安らぎ』を味わってもらいたいと思っています。
2004年12月12日
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Excerpt: 今日10/15、時間管理の幸せミニセミナーに行ってきました。タイトルは、このセミナーの費用ではありません。(笑)1日の時間に関係あり、です。さて、セミナーのなかで、講師の方がおもしろいことを言われたの
Weblog: 金持ち父さんとラットレースを抜け出せ!
Tracked: 2005-10-15 23:34
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