そろそろ年末である。
昨年の年末は家族で、ペナン島、クアラルンプールに行った。
帰りが、1月1日の午前1時発の飛行機だったので、安かったのだ。
クアラルンプールの空港から、マレーシア航空のジャンボ機に乗った。
ちょうど機体の真ん中あたり、通路に挟まれた中心の座席。4列ほど前がトイレだった。
離陸してまもなく飲み物がサーブされたあたりで、通路を挟んで斜め前の家族連れの中年女性が、スチュワーデスに機内販売を申し込み始めた。
今時、機内販売など利用する人はないので、スチュワーデスも要領がわからずおろおろしていた。
まだ、コップの回収などの最中だったので、もう少し後で・・・ということになったらしい。
私はワインをいただいて、ウトウトとしていた。
ひそひそと話し声で目が覚めたので、時計を見ると午前2時を回っていた。
横を見ると私のすぐ横の通路に、アルミ製の大きなワゴンが止まっており、例の中年女性が機内販売でスカーフを買っている様子が見えた。
「あー。迷惑」
と思ってみていたら、すぐ前のトイレから日本人の25歳ぐらいの女性が出てきた。
と思ったら、そこでバッタリと倒れたのである。
機内販売中のスチュワーデスがその音に驚いて振り向き、それを見つけ、
「オー!ノー!」と駆け寄る。
その女性の席はトイレのすぐ前で、同じグループであろう男性が飛び出してきて、2人で席に運んだ。
「大丈夫かなー?」と思っていたら、例の機内放送である。
「アテンションプリーズ、アテンションプリーズ!ドクターが乗っておられましたら、すぐにアテンダントまでお知らせ下さい。」(もちろん英語で)
こういう場合歯科医の立場は微妙である。
すぐに行っていいものかどうか?
誰か出て行くかとキョロキョロ見渡してみたが、誰も立ち上がる気配がない。
しかたがないので、行こうとしたものの、横の通路にワゴンが止まっている。動かそうにもストッパーがかかっているので動かない。
ワゴンの上に乗り、飛び降り、スチュワーデスに、
「私は歯科医です。」と言った。
よほどの緊急事態とみえ、顔面蒼白のスチュワーデスは
「オー デンティスト」といいながら私を病人の座席にひっぱって行く。
この際、歯医者でも、獣医でも何でもいいわということなのだろう。
その席にいくと女性が目をつぶったまま、ぐったりと席に座っている。
前の席からは先ほどの男性が心配そうに見ている。
「ご家族ですか?」
「いいえ。グループです。」
「この方は何か病気を持っていますか?」
「いいえ。ないと思います。」
脈を取ると・・・エッ!触れない。
胸に耳を当ててみると・・・ウソッ!心臓の拍動が聞こえない。
鼻の下に指を当ててみると・・・ヤッパリ!呼吸も止まっている。
これはまず人工呼吸、心臓マッサージ・・・そして「アンビリーバボー」のように地上と交信しながら何か緊急手術でもせんとあかんかもわからん。
そんな細かいことまで英語できへんぞ。
こんなことが走馬灯のように脳内をよぎる。
「この人の名前は?」
「チョウダといいます。」
「チョウダさん!チョウダさん!」
耳元で大きく叫びながら、体をゆすった・・・その時である。チョウダさんは、
「フーッ」
と大きく息をして、ゆっくりと目を開けたのである。
もちろんゆっくりだが脈も触れ、正常に戻りつつあった。
「しんどかったの?」
「うん。」
「大丈夫?」
「大丈夫です。」
振り向いてスチュワーデスに、
「イッツオーケー」
多分、強行軍か遊びすぎによる疲労でショックを起こしたと考えられる。
席に戻っても足ガクガク。
白ワインを3杯ほど飲んでももう眠れない。
ずっと本を読んでいたら、朝の5時ごろ横の妻が目を覚まし、
「寝ーへんかったん?」
「実は、カクカクシカジカ・・・」
「ほんまー?」(半信半疑)
7時に関空到着。
飛行機から降りる時に、ひょっとしたら機長が挨拶にくるかな?なんか飛行機の模型か記念品もらえるかも?
少なくとも「先ほどはありがとう。」ぐらいは言われるやろうと思っていたら・・・
なーんもナシ
ゲートをくぐったところで、妻に言われた。
「なんも言われへんかったけど、ほんまなん?」
荷物を取るとき、家族を広いところで待たせ、ベルトコンベアーの前で私は一人で待っていた。
そこに、チョウダさんが来て、
「先ほどは本当にありがとうございました。」
と言ってくれたのだが、悔しいかな、家族が見ていない!残念!
このためいまだに、このアテンションプリーズ事件は幻なのだ。
マレーシア航空の関係者の方、このブログをみていたら、こういう場合は父親の名誉のためにも「サンキュー」ぐらいは言ってあげるようにしましょう!
2004年12月05日
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